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無料BL漫画 ふじょきん

  • お題少し悲しいですが、『恋人どうしの別れ話』でお願いします。
    始まりは「別れよう」または「別れましょう」から。

    (45)

    出題者 貴腐人

回答「別れようか」

ひとけのない喫茶店。カップから立ち上る白い湯気の中で、陽一さんがぽつりと呟いた。
ストローでグラスの中を掻き混ぜる度に氷同士がぶつかり合い、からんころんと音を奏でる。俯いてそれを眺めていた俺は、陽一さんの声を聞いて無意識にストローを回す速度を速めた。

「ど、…うして?」

「……幸せにしたい人が、できたんだ」


そっか、とだけ陽一さんに返す。声は震えてなかっただろうか。


高校時代、親にも当時の友人にもゲイだということをを否定された俺を唯一受け入れてくれた人が、五つ歳の離れた陽一さんだった。
恋人同士になって二年弱、段々とつかず離れずな関係になってきていたような気はする。

「ごめん、亮介くん」

「………ううん、謝らないで」


今度は、上手く笑えていたのかが心配だ。
ぎゅう、とズボンを握りしめた手は僅かに震えていて、自分がどれ程動揺しているのかがわかる。

動揺しながらも、妥当な別れ方なのかもしれない、なんて頭の隅で冷静に考える自分がいた。
もともと陽一さんはノンケだったんだ。人より優しい性格をしている彼は、俺の告白を断りきれずに付き合ってくれていたのだと思う。
二年も付き合ってくれただけで、もう充分だ。


「…えと、何か軽食でも頼もうか?」

「いいよ、大丈夫。帰るね。………今までありがとう」

そう口にしながら立ち上がり、財布から千円札を取り出す。コーヒーとアイスティー程度だったらこれで釣りがくるだろう。

カフェテーブルにそれを置くと同時に手首を掴まれ、陽一さんが顔を上げた。


「亮介くん、聞いて。
……俺、亮介くんと付き合えてよかったよ」

「…!」

「こちらこそ、今までありがとう」






好きだったよ、亮介くん





目頭が、じわりと熱くなる。視界がぼやけてきた。
優しく目を細めた陽一さんが、俺の手の平に千円札をそっと返す。彼の手から俺の手首が抜け落ちると同時に、余韻を残さずぐるりと踵を返して、足早に入り口へと進んだ。

陽一さんの口から俺の名前を聞くのは、きっとさっきのが最後だ。
あの大きな手で触れられるのも、真摯な眼差しを向けられるのも、あれが最後だ。


(…やばい、泣きそう)





幸せになってね。

そう言えなかったのは、俺の中にある醜い感情がストッパーをかけたからだ。

…俺以外の人となんて、幸せになってほしくないよ。
二年も付き合ってくれて充分、なんて嘘。
もっと一緒にいたい。いろんな所に連れていってほしい。抱きしめてほしい。


…愛して。




もう叶いそうもないことを並べては、自嘲気味に笑ってみる。

外に出ると、夏の空気が俺を包んだ。
冷房が効いていた店内とは違うその蒸し暑さにうんざりする。ごしごしと目を擦り、青く澄み渡るような空を見上げた。


「………嫌だなあ」

嫌になるくらい、綺麗な青空。
今の俺には少し、眩しすぎる。


何となしに蹴った小石がころころと転がり、まちの中に紛れ込んでいった。

回答者 貴腐人

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    • お題少し悲しいですが、『恋人どうしの別れ話』でお願いします。 始まりは「別れよう」または「別れましょう」…

      回答第四夜〈夜桜のもとで。〉 これまでのあらすじ。 大学生の康雄はワガママで浮気性な彼氏、朋と……

      1

      回答者 らり。さん

    • お題少し悲しいですが、『恋人どうしの別れ話』でお願いします。 始まりは「別れよう」または「別れましょう」…

      回答「別れよう。」 その軽い口調から、絶望的な台詞 から、僕はその端々から、貴方の果てない愛を受け取……

      ジャンルオリジナル

      2

      回答者 夜歌さん

    • お題少し悲しいですが、『恋人どうしの別れ話』でお願いします。 始まりは「別れよう」または「別れましょう」…

      回答「別れよう」 そんな言葉がくると身構えてはいたものの、心に重くのしかかる。 今までありがとうな……

      1

      回答者 佐原さん