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ハルとリィシリーズビタースウィート

プロローグ的な物語。

甘ったるいわけじゃない
苦いだけでもない

この関係の名前は?

※ぬるいですが、R-18表現あり。
※不倫表現あり(攻が既婚)ご注意願います。
リアルは不倫非推奨です!!

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1ページへ家のチャイムが約束していた人物の来訪を告げる。
とりあえず玄関のドアの鍵を解錠し、インターフォンの画面に映る人物を確認すると、通話ボタンを押した。
 
「どうぞお入り。ハニー?」
「……聞かれて困るのは、そっちだけど?」

俺の軽口に嫌味を返す人物は、コートのポケットに手を突っ込んだまま、エントランスのカメラをチラリとも見ずに眉を寄せている。
どうやら、寒いのが苦手な彼は少し機嫌が悪いらしい。
 
「つれねーなぁ。リィは。部屋の鍵は開けとくから勝手に入っていーぞ。」
  
文句を垂れながらも、これ以上のやり取りは無意味だと悟り、おとなしくオートロックを解除してエントランスを解放する。
「リィ」と呼ばれた客人は、言葉を返す事もなく革靴の音を響かせてカメラの前からエレベーターへと足を進めた。
 
「ほんと、つれねーなぁ。」
 
無人になった画面を眺めて、ひとり苦笑を溢す。
この無愛想さが不快でないのは、もう彼の才能ではないかと俺は思っている。

「さて」と、呟きつつ部屋に向き直ると空調のボタンの所に足を進めた。
なんせ寒がりな彼の事だ。
もし、部屋が肌寒かったりなどしたら、入った途端に踵(きびす)を返しかねない。
生憎、暑がりの俺には彼の基準が量りかねるので、温度を上げておくことに越したことはないのだ。
部屋の温度を3度程高く設定し終えたところで、玄関のドアの開く音がする。
挨拶もなく入ってくるのは、いつものことだ。

「いらっしゃい。リィ。待ってたぜ…っと!うわっ!」

そんな彼を笑顔でリビングのドアを開けて迎え入れると、いきなり首に腕を巻き付け、体をくっ付けてきた。
ひんやりとした彼の体を受け止めながら、期待に自然と笑みが漏れる。
 
「んだよ。そんなに俺に会いたかっ…」
 
「寒い。早く閉めろ。」
 
「あ、はい…。」
 
腰を抱き、熱っぽく囁こうとした途端にコレである。
さすがにちょっとしょぼくれながらリビングの扉を閉め、改めて彼の体を抱き返す。
身長は5センチ程しか差がないのだが、ほっそりとしているからか、何となく包み込んでいる感覚が強い。
この感覚を俺は気に入っている。

「ハル。愛しの奥方様は大丈夫なのか?」
 
「……いきなり抱きついておきながら、今さら聞くなよ。俺の愛しの天使様は今頃、国際線の中。来週いっぱい帰ってこないってさ。」

俺の肩に顔を埋めたまま言われた言葉に、本日何度目かの苦笑を漏らして答えながら、少し体を離すと薄い色の瞳と目が合った。

「じゃあ、しばらくは遊んでくれるだろ?ハル。」

目が細められ、唇が誘うように弧を描いて、そのまま耳元をくすぐる。

「もちろん。」

自然とこちらも笑みを浮かべながら、相手の顎を捕まえて、深い口づけを贈った。


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リィとは、高校の同級生だ。
サボリ場が屋上にある貯水タンク裏であったこと、お互いに外国の血が入った容姿であることが共通点 。
髪色が明るく、体躯がデカく、肌も浅黒かった俺とは対照的に、リィは真っ黒い髪に薄い瞳の色、抜けるような白い肌と真逆の見た目ではあったが、なんだかシンパシーを勝手に感じていた。
そして、迷惑そうなリィを尻目に料理を振る舞うなど、付きまといつづけたのだった。
 
因みに、呼び名が「リィ」なのは、なにも名前が外国式なのではなく、俺が「理佐(みちよし)」を「りさ」と読み間違えたところからきている。
リィも俺の名前「遥(よう)」を揶揄して「はるかちゃん」と呼び返して来たことから、今現在の「ハル」という呼び名につながっている。
無愛想で掴みどころのない彼を「リィ」と呼ぶやつは他にいない。
俺の事を「ハル」と呼ぶやつも他にはいない。
訳もなくそれが嬉しかったのを覚えている。

 
「なぜ、妻がありながらこんな関係を?」と聞かれれば、答えは単純。
「体が空いてたから、なんとなく。」の一言につきる。

実は、高校生の頃からリィとは「そういう」関係であった。
経緯はこうである。
 
同じようにサボっている自分とリィの成績に大きな差があり「なぜだ!ズリぃ!」とボヤいている俺に、「特別なコネがある」という曖昧な答えが投げられた。
秘密にされている事にモヤモヤしていると、偶然、見てしまったのだ。
 
教師とリィの情事を。
 
その事をリィに告げると、一瞬、戸惑うように見開かれた目を細めながら、「僕としたい?」と問い返された。

高校生の俺は頷いていた。
黒髪が、白い肌が、教師の下で揺さぶられている光景が焼き付いて離れないものだったからだ。
 
それからは若さにまかせて、互いの体を貪る日々だった。
しかし、恋人のような甘さはなく、所謂セフレというやつだ。
体の相性はバツグン。
普段は友達としてさっぱりとした関係。
卒業し、音信不通になるまでは、そんな都合のよい関係が続いた。
 
 
そして、つい最近偶然の再会をはたした。
お互いに大人になり、俺にはパートナーが居るが、うまくいっていない時の再会だった。
リィは、高校時代の俺を釘付けにしたあの面影を残したまま、言ったのだ。

「また、僕としたい?」
 
大人になった俺も頷いていた。
 
 
 
大人になった俺を苛む事から一時だけ逃がしてくれる関係。
 
愛を囁きあう甘さはないが責任を負うような重さのない関係。
 
彼となら、そんな適当な関係も、高校時代の名残りで許される気がした。


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「随分と余裕だね?ハル。」
 
リィが上から覗き込むように、にっこりと笑っている。
いつも無愛想なくせに、ベッドの中ではよく微笑んでみせるのだ。
しかし、それは心よりの笑みでないことは、首の後ろを掴む指の強さから伝わってくる。
考えを巡らせるうちに、気もそぞろになっている様子を見抜かれたようだ。
 
「そんなわけないだろ?」
 
「ヤル気ないなら時間の無駄だと思うけど?」
 
「そう言うなって。見とれてただけだ。リィに…。」 

微笑み返しながら、うやうやしく手にキスを落とす。
甘い言葉も、大人同士の情交ではただのエッセンスだ。
そこに重さはない。

「どうだか。」と冷めた笑いを見せる彼の腰を引き寄せ、繋がった部分をグリッと押し付けてやると、僅かながら息を飲む様子が見てとれた。

「証拠に、な?硬ぇだろ?」
 
リィの反応が返ってきたのに気を良くし、腹の上に跨がる相手をニヤニヤと見上げると、みるみる眉間に皺が寄っていく。
抗議の声を上げるでもなく、いきなりナカのモノが締め上げられた。
自分の顔が引きつるのがわかった。
それを合図にリィが遠慮なく体を揺らし始める。
 
無論、締め上げたまま。
 
「っ……ぐ!ちょ…やべぇ……って!!」
 
そうなると余裕がなくなるのは俺の方。
そんな様子を見下ろしながらリィは満足げに笑っている。

「さっき…までの、余裕はどうした…?」
 
問いかけながらも責めが緩む気配はなく、口許は弧を描いている。
相手はまだ余裕って事だ。
 
(このやろ…っ!)
 
憎々しい笑顔にしてやられてばかりではおれない。
細い腰をしっかり掴むと、先程反応のあった場所を重点的に擦り上げた。
 
「…っ!…はぁっ。」
 
ただ、感覚だけを追って、心地よいリズムを探す。

「ぁ……っハル…。待っ……ん!」
 
元々、熱くなりにくいリィだからこそ、いきなりの急ピッチは少し辛いらしい。
しかし、今は少し意地悪な気分なのだ。
 
「先に、言っとく、な…。……悪ぃ。」
 
「何…?……っ!あぁっ!!」

断りもそこそこにリィの膝裏を捕まえると、一気にひっくり返した。
自分の体重ごと一気にのし掛かると高い声が上がった。

「待っ……ぁ…ひっ!ハルっ!待て!」

「俺ァ犬か!」
 
足を大きく開かせ、その間に体をねじ込みながら、ガンガンと責めていくと、堪らず静止がかかる。
その声に反論しながらも、何度もナカを穿った。

「ぁ、あぁっ!や……っ!あぁっ!」
 
「嫌じゃ…ねーだろ?足絡めてきといてよぉ。」
 
いつの間に腰に巻き付いている足の付け根あたりを指でなぞると、「余計なことを言うな。」とばかりに抗議の視線を向けられる。
生理的な涙で潤んだ瞳からおくられたそれは、俺を煽るものでしかなく、自然と笑みが溢れた。
それが気に入らないのか、ちっ。と小さく舌打ちし、再び首に抱きついて体を引き寄せられ、相手の体に密着するようにベッドに倒れ込む形になる。
 
「リィ?。甘えん坊は嬉しいけど、動けねぇよ?」

顔の間近にきた耳元にキスを何度かおくりながら、言葉とは裏腹にこちらから甘えるように名前を呼んだ。
そんな俺を無視するように、ゆったりと腰をスライドさせ始めた。
先程までとは打って変わってもどかしい刺激であるが、絶妙な締め付けにこちらも合わせて緩く揺さぶった。

「…あっ。…あぁっ。」
 
ゆらゆらと動いていると、段々とリィの声が甘くなる。
密着しているからか、ダイレクトに耳元に流し込まれる声に、己が熱を増したのを感じた。
少し体を起こし、暴走しそうになる程の昂りを何とかやり過ごす。
すると、離れるのを嫌がるようにリィが体を寄せてきた。
 
「ん…っ。はぁ…。ぁ…っ。」
 
自ら腰を擦り付けてくる。
密着した体と体の間で彼のモノが擦れ、ひくりと震えながら恍惚と息を吐く様子が理性を奪い去った。

相手の肩をベッドに押し付け浮いた腰の下枕を詰め込む。
白い足の片方を肩に担ぎ上げると、差し出された格好の下半身を貫いた。
 

「っ…!!」
 
衝撃に身をすくめた様子を気にも止めず、欲望だけを追うように突き進める。
すがるものがないのか、リィはシーツを握りしめ身を縮めたまま揺すられていた。

「っあ!ハ…ルっ。苦し…っ!待て…って、イイコだから…ぁっ!」
 
 
(俺ァ犬か。)

苦しげ吐き出された言葉に心のなかで突っ込みながら、懇願するような表情を見せる彼のナカに無遠慮にぶちまけた。


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「さよーならー。分身ちゃんたちー。」
 
「………パンツ一丁で下らないことやってないで、シャワーあびたら?」
 
ベッドに転がったまま、妙な節をつけながら入り口を結んだゴムをゴミ箱に投げ捨てていると、シャワーから上がってきた人物のそっけない声が聞こえた。
 
「冷てーよなぁ。リィは。……あれ?寒かった?」

体を起こしてベッドの端に腰掛け、声の方に視線を向けると、コートを着込む様子が見えた。
部屋の温度は激しい運動も相まって、俺には暑いくらいであった。
 
「あぁ。次の遊び相手の所にいこうと思ってね。」
 
「へ…?」
 
こちらに視線もくれずに言われた予想だにしない答えに頭がついていかず、間抜けな声を漏らして鏡の前で身だしなみを整える様子をみつめてしまっていた。
 
「……はぁ!?もう帰んの!?いよいよ冷てぇーなぁ!なんだよー。しばらく遊んでくれるって言ったじゃんかよー。」
 
ようやく考えが追い付くと、あんまりな言葉に抗議を口にした。 
近くにあった枕をむんずと掴んで抱きしめつつ、駄々っ子よろしくジタバタと足を動かす。
リィは、盛大なため息と共にコートの裾を翻し、近くにやってきて俺を見下ろしたまま、にっこりと笑みを作ってみせた。

「こんなことは本来、言うべきじゃないけど…。」
 
落ち着いた声音で言いながら、白い手が頬をなでていく。
次の瞬間。
 
「さっきので、僕が満足できる訳無いでしょ?」
 
座っている俺にズイッと顔を近づけ、先程と変わらないにっこりとした笑顔のまま、ぎゅむっと遠慮なく頬をつねられた。
その事に抵抗するよりも、問い掛けに「うっ!」と言葉を詰めることしか出来なかった。

その通りであるからだ。
実際にあの時、無遠慮に動いた上に勝手に達してしまった俺のふにゃけたモノを見て、リィは盛大にため息をついてシャワールームに向かったのであった。
 
「いやいや!あの後お前がシャワーなんぞ行かなかったら、それこそめくるめく営みの世界が……」
 
「電話かけるから静かにしたら?テクなし。自分勝手。早漏。」
 
「はい…。すみません。」

解放された頬を撫でながら苦しい言い訳をするものの、電話をかけだす様子と放たれた辛辣な言葉に撃沈する他なかった。
 
「うん。また後で。まってる。……じゃあ帰るから。」
 
「………へーい。」

電話口にむかってとろけるように囁きながら、通話終了ボタンを押せば別人と思えるほど憮然と見下ろされる。
その差を見れば、流石に少しイジけながら口を尖らせて答えるしかない。
その様子を見たリィは、ふっと笑いながら子供にするようにポンポンと頭を撫でた。

「また遊んでやるから、拗ねるなよ。ハル。」 

「次、覚えてろよ?」

頭に置かれた手を払いながら宣言すると、楽しげに笑顔を向けられた。
 
「一応、期待しておく。じゃあな、ハル。愛してるよ。」

「ああ。」
 
熱っぽい言葉とは裏腹に、別れのキスは挨拶程度の軽いものだった。
余韻を楽しむ間もなくコートの後ろ姿はどんどん遠ざかる。
玄関の扉が閉まる音が聞こえると、ベッドに仰向けに倒れ込んだ。
 
「あー!今日はやられたー!次はぜってー泣かす。」
 
大の字に転がったまま、八つ当たりのように枕を放り投げた。

リィとの関係が煩わしくないのは、こういう時に湧く感情がねちっこい「後悔」ではなく、スポーツで負けたときに感じる悔しさに近いからなのだろう。
目の前で次の約束を取り付けるのだって、嫉妬してほしいわけでなく、単に俺がからかわれただけだ。

(愛してる、で勘違いするほど…子供でもないしなぁ。)

そう考えながらも、電話口に甘い言葉をかけるリィを思い出すと、眉間には軽く皺が寄るのを感じる。
 
自分のものにしたい、なんて思っていない。
そもそも、妻との予定をキャンセルしてまでリィと会おうとも思わない。
 

けれど、散々捲し立ててきた「なんとなく」「遊び」「スポーツ」という言葉に似つかわしくない「重さ」が、ふと胸を過るのだ。
 
 
「なんなんだろうなぁ……。」
 
声に出してみても、ひとりの部屋に返事をくれるものはない。
先程投げ飛ばした枕を手繰り寄せると、胸に抱えて目を閉じた。
ゆっくりと睡魔が頭をもたげ、微睡みに身を預ける。

ふと、去り際のリィの言葉が聞こえた気がした。
 

「俺も…愛してるよ。リィ。」
 
呟いた言葉が熱を帯びたものだったのか…。

その判断を下さぬまま、俺は眠りに身を投じたのだった。
 
 
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