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キミイロプロローグ

初恋の相手との再会、けれど目で追ってしまうのは自由奔放な親友のことばかり。

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1ページへ真っ暗な山道を上りながら、汗を拭う。
暑い・・・。
昼間よりはマシだが、やはり8月は暑い。


「真紘、大丈夫?」


オレより先を歩いていた良隆が引き返してきて心配そうに顔を覗きこんできた。
優しげな瞳に幼さの残る顔立ち。
絵に描いたような好青年の良隆らしい。


「真紘・・・」

「大丈夫だから先行けよ」

「・・・うん」


心配そうにオレの顔色を伺いながら、良隆はまた先を歩き始めた。
もうすぐで見晴らしのいい場所に出られる。
空も曇っていないから、きっと綺麗だろう。


「真紘っ、あそこだよっ」


駆け出した良隆の前方に見えるのは、見晴らしのいいベンチと冊。
先に座ればいいのに、良隆はオレが到着するまで立って待っていてくれた。


「お疲れ様、真紘」

「おう」

「ほら、座ろ」


隣り合わせでベンチに腰かける。
空には満点の星空が広がっていた。
都会では見られない、小さな輝きたち。
すっ、と良隆が空を指差した。


「ほら、夏の第三角」

「あれがそうなのか」

「うん。ベガとアルタイル、あとデネブ」

「ふーん」


オレは空じゃなくて、良隆を見ていた。
確かに隣に居るんだって、目で見て確かめたくて。


「聞いてないでしょ・・・真紘」

「・・・・・・・・」

「真紘?」

「・・・引っ越すなよ、良隆」


つい、口から零れてしまった言葉に良隆は固まってしまった。
明日、良隆は引っ越してしまう。
親の仕事の都合で、都会に。
中学1年の子供が親についていかない訳がない。


「真紘」

「・・・・」

「オレさ・・・」


空を見上げて、何かを考えているみたいに良隆はしばらく黙っていた。
小学生の時から一緒に居た。
家も近くて毎日遊んでいた。
夏は虫採りとか魚釣り、秋は山で焼き芋をして冬は雪合戦をして、春はクラス替えに一喜一憂して・・・。
それが全部、出来なくなる。
良隆は遠くへ行ってしまう。


「真紘、真剣な話なんだけど」


空を見上げたまま、良隆は言った。


「何だよ」

「オレ、真紘のことが好き」


驚いて、良隆を見ると泣きそうな顔で笑っていた。
何で、そんな泣きそうな顔してんだよ。
何で、泣きそうな顔で笑ってんだよ。
オレの方が泣きたいっつの。


「あはは・・・、ずっと言わないつもりだったんだけどな」

「何だよ・・・いきなり」

「うん。何してんのかな、オレ」

「びっくりするだろ」

「真紘・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうして泣いてるの」

「お前だって・・・泣いてんじゃん」

「オレ泣いてないよ」


涙を流しながら、良隆はオレの頬を抓った。
オレが落ち込むと良隆はいつもオレの頬を抓ってきた。
それが・・・なくなる。
もう会えなくなる・・・。


「真紘の泣き虫」

「うっせぇし。良隆だって泣いてるだろっ」

「うん。泣いてるかも」

「なんだよ、それ」


さっきと言ってること違うじゃん。
こんなに泣いたのはいつ以来だろう。


「真紘、大好き」

「・・・・オレも」

「キスしていい?てか、する」


唇に触れる感触。
真夏の満点の星空の下、大好きな人と初めてのキスをした。

泣きながら笑うオレ達は、きっと馬鹿に見えただろう。
けどきっと、オレはこの出来事を忘れない。

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